人手不足の歯科医院こそ取り組むべし!離職率を下げるための意外なアプローチ

歯科医院は慢性的に人手不足とされ、特に勤務医やDHの採用難は深刻さを増しています。人件費も高騰しており、かなりの投資をして採用広告を打ったのに(広告を出し続けているのに)全く人が来ないとのお悩みも尽きません。

だからこそ、教育コストをかけたスタッフには長期間働いてほしいもの。

意外なようですが、院内整備を手がければ低コストで離職を防ぐことができ、採用に必要な費用も減らすことができます。ここではその理由を見ていきましょう。

院内整備で、離職率が下がる理由

書類やデータなど、情報が「俗人化」して困るという声は非常に多く聞かれます。
つまりどこに何があるかが担当者だけしかわかっておらずに情報共有がしきれていないため、探しだせずに仕事が進まない状態を意味します。

歯科医院様はシフト制となっているためか、他業種と比べて比較的標準化が進んでいるようにも見受けられますが、担当者不在時に限って「今日中に何とかして」といった問い合わせが来てしまうもの。そのときこそ院内環境が整備できているか否かが問われます。
また、ユニット周辺のワゴン内・シェルフ内が各自の好みで配置されている(属人化してしまう)と、衛生士Aさんがいつも使っている1番ユニットが、お休み時には稼働させられず回転率が落ちるなどの残念な状況が発生します。

【患者様】クレームを回避しやすい

診療に必要な物品や情報がサッと出てこないなどが生じれば、患者様を長時間お待たせすることになります。
担当者間でうまく情報が共有しきれず的を得ない対応を繰り返せばクレームにつながりかねません。担当者同士や医院への信頼関係にかかわる恐れもあるでしょう。

もし診療内容が良いなら、これはとても勿体ない話ではないでしょうか?

【スタッフ】達成感を感じることができ、スタッフ間のもめごとが減る

担当者不在でも即応できて患者様のリクエストを満たせる機会が増えれば、達成感や成長を感じられる機会が増えます。結果的にスタッフの自院への評価が高まります。

一方で、在庫や備品や書類がどこに置いてあるかがわからなかったり、各自が「使ったら戻す」を徹底できていなければ、共有品が見つからなくなります。
探し回ったり、Aさんが確保していた在庫(商品)をBさんが勝手に使ってしまうなどのトラブルが生じ、もめごとにもつながるでしょう。

以前サポートさせて頂いた飲食店で事前ヒアリングしたところ

「冷蔵庫の中に残しておいた食品在庫を勝手に使われてしまった」
「伝票を誰かがどこかに置いてしまい、自分が探し回る羽目になった」
「私はきちんとやっているのに、Bさんはきちんとやっていない」

といったエピソードを伺うこともありました。

【スタッフ】関係性が良くなり、働き方改革にもつながる

仮にトラブルやもめごとを減らすことができれば、各自のストレスが軽くなり居心地もよくなります。
診療・作業中断もへって本来の仕事に集中できるので、作業効率も成果も上がるでしょう。また、休憩時間にはスタッフさんには快適な空間で過ごしてもらいたいもの。多くの院長先生はスタッフ様へすごく心配りをしているため、バックヤードを快適にしてストレスをへらしてあげたいとの依頼も少なからず頂きます。

院内の居心地がよくなればもっと価値ある仕事に注力できるので、スタッフの残業削減にもつながり満足度が上がります。さらに、情報共有がすすめば業務の引継ぎもスムーズになるため、スタッフは時間外に呼び出されることも減って気兼ねなく有休をとれるようになるでしょう。
パートタイム職員や産休育休職員とのワークシェアの効果も期待できますし、経営側にとっても人件費の節約にもつながります。

院内整備の構築=動線改善と仕事の流れの見直し

3人分の労力が2人分に?!、採用しないで済む可能性も出てくる

まず使用頻度の低いものを退避させ、使用頻度の高いものを仕事の流れに沿ってモノを配置すれば、余計なアクションや移動をなくすことができます。
短時間で同じ成果を得ることができて、動線のムダによる不必要な作業も減ります。
もともと大きな動きのムダがある医院に関しては、予定していた増員そのものが要らなくなってしまうケースすらあります。

例えば、毎日使う扉の前にモノを置いていて、物をどかして作業する場合

扉の前の物をどかすのに30秒、
中身を出してから扉を閉め、どかした物を戻すのに30秒かかっているなら

⇒ 30秒x2回x250日(年間勤務日数)=250分=4.16時間

こういった動作が仮に5種類あるなら 4.16時間x5=20.8時間

一見ほんのちょっとの動きのムダに感じられるかもしれませんが、こういった動きの積み重ねは侮れない数値になっていきます。

この「余計なアクション」というのはごく当たり前の動きになってしまっているため、毎日同じ医院で時間を過ごし、同じ業務をくりかえしている当事者ではなかなか気づくことができません。
一方、普段その空間にいない第三者であれば「なぜそうなっているのだろう」「なぜムダな動きをしているのだろう」といったことが客観視できるので、当事者が無意識にやってしまっている無駄を発見しやすくなります。

特にプロはよくある無駄な動きや改善策を熟知しているため、大幅な業務効率化も期待できます。

院内整備が進めば、クリニックの採用と教育がラクになる

20から30代の若い女性はキレイなオフィスが好き

私は会社員時代やむを得ず6社を渡り歩くことになりましたが、「オフィスがキレイだから」という理由でこの会社を選んだと言っている若い女性社員にたびたび出会いました。

私が最後に勤務していたIT企業では、エントランスが吹き抜けの心地よい空間になっていて、スタイリッシュな木製のオフィス入口の扉を開けるのを個人的に楽しみにしていた記憶もあります。

形ある商品を持たないIT成長企業では近年特に、オフィスの調度やエントランスにコストをかけて非常にセンス良く、心地よい空間に仕上げている会社が増えている印象があります。応接空間や会議室はもちろん、社員の憩いの空間にも座り心地のよいソファやデザイナーズ家具が心地よく配置され、なかにはハンモックのようなチェア・素敵なマッサージチェアが置いてあるところもありました。20から30代の若手のアイデアを創出するためでしょうか?

本記事をFacebookで紹介したところ、採用専門コンサルタントの友人がこのような見解を紹介してくれました。
うーん納得・・・↓↓

有能な社員ほど、所属する組織・空間の非効率的な部分が見えてしまいますから、 院内整備の改善はとても有益なアプローチだと思います。 先日も面接室が散らかっていた企業さんに出くわし、候補者さんに 「入室1秒でここはないって思いました」と見切られていました。

私自身も「オフィスが汚すぎて面接に呼べない」というご依頼を頂いたことがあります。

極端な例に思われるかもしれませんが、オフィスの見た目を気にする若手は少なくありません。
歯科医院の採用は激化しています。院内環境が選ばれる条件の1つになりうる点は、意識しておく必要があるでしょう。

どこに何があるかがすぐわかれば、新人も戦力化が速い。マニュアル整備もお勧め。

入職直後は人間関係づくりがこれからのため、忙しい先輩の手をあまり煩わせたくないと考える新人も多いでしょう。
そんな折に、どこで何があるのか・どこへ戻せばよいかが一目でわかったり、「なくなったら補充」などとラベルでアクション表示があれば、自分でもできそうな仕事が見つけやすくなります。

私自身、入社4日目に先輩指示で倉庫内に保管された書類を取りに行ったことがありました。
その倉庫では書類保管のルールが徹底されており「倉庫にいけばすぐわかる」の一言で本当に探し出すことができました。
4年前に作成されたものがたった5分以内に見つかり、先輩の手元へ持っていくことができましたが、ここまで徹底できている中小企業はなかなかありません。

見てもわからない状態では、入社後日が浅い後輩はどうしても指示待ちとなり先輩の工数が余計に取られます。誰もがパッと見てわかる仕組みがあれば、新人でもある程度見ながら動くことが可能になります。
また、以前無印良品元社長の講義を受講した際、教育戦略は「徹底したマニュアル整備」とお話をされていました。
すぐに見てわかる現場、手軽に見られるマニュアルの整備ができれば、先輩の指示出しも最低限で済むため、新人教育の負担もぐんと減らせるのです。

院内整備を実践されている途中、物品の選別分類の折にリーダーと新人とをペアにさせ、教育がてら物や書類の確認・配置などを一緒に行った医院様からお話を伺ったことがあります。教育しながら先輩後輩のコミュニケーションが図れて一石二鳥だったそうです。

OJT(実務を通じた教育)にもコツがある

新人教育の手間は院内整備でかなり軽減できますが、それでも先輩から後輩には業務を口頭で伝える機会が発生するでしょう。

ここで意識したいのが「伝え方」なのですが、同じ仕事内容や注意点を伝えるのでも、言い回し1つで新人に与える印象・やる気を大きく左右してしまいます。
できることなら教育係には、新人が前向きになれる言い回しを心がけてほしいもの。

できる院長や幹部は、スタッフへの伝え方を熟考しています。
当方の専門は院内環境の最適化ですが、もしスタッフが辞めたくなくなるコミュニケーション術にもご興味があればお気軽にご相談ください。当方は社会人時代には実務で十数名のOJTを担当し、埼玉県某市役所のOJT研修を5年以上担当などの実績もあります。

その他、各地で開催されているリーダー講習、アサーティブコミュニケーション講習などで学ばれるのもお勧めです。

まとめ

採用広告を出してもなかなか人は来ません。だからこそ、今いるスタッフと、せっかく来てくれた応募者をなるべく取り逃さない工夫が必要となるでしょう。
院内整備の改善は事業規模に関係なく、今すぐ低コストで始められる手段の1つとして非常に有効です。
有能なスタッフの離職を防ぎ、有能な人財を獲得するためにも、1日も早く取り組まれることをお勧めします。

今日もここまでお読みくださりありがとうございます。